iPadのOSがとうとうスマホから分離して独自のiPadOS(アイパッドオーエス)となってリリースされました。iPadOSによりiPadはよりMacやWindowsといったパソコンに近づいたと言われています。そんななか、今使っている「ノートパソコンをiPadに買い換えることができるのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
ただ、結論から言ってしまうと「可能だが限界がある。PCの完全な代わりにならない。」というのが私の感想です。
もちろん、一定層の人にとってはiPadは十分PCの代わりになると思う。ただし、その一定層の人に関してはそもそもPCでなくスマホがあれば十分なのではないか?という層のユーザーも多く含みますが。。
こちらのエントリーは、iPadOSが登場してiPadがよりパソコンライクに使えるようになったことを踏まえて、iPadはパソコンの代わりになるのか?というテーマで書いていく。実際にiPadをノートパソコンの代わりにして利用しようとして、挫折してノートパソコンに戻った筆者が実際に利用して感じた内容を書いこうと思います。
iPadは結局タブレットでノートパソコンではない
私は初代iPadを発売と同時に購入し、そこからiPadをずっと利用し続け、現在は発売日に購入したiPadPro11インチを利用しています。2018年11月に発売されたiPadPro11インチは、大きなアップデートをとげました。
PCとの置き換えを念頭にスマートキーボードも追加購入し10ヶ月ほど趣味であるブログを書いたり、仕事にiPadを活用してみたりと毎日のように使っています。もちろん、iPadOSが発表されてからはベータテスターとして初期の段階から新しいiPadOSを利用しています。
ちなみに私のノートパソコンのメインの用途としては下記
- 仕事での利用(メールのチェック・Slackやファイルの確認など)
- 提案資料の作成
- 趣味であるブログの記事作成
- ブログのカスタマイズ(HTML・CSSの修正等)
iPadのメインの用途としては下記
- 電子書籍の閲覧
- ブラウジング
- ブログ記事用の画像素材の作成や調整
- メモ・アイディア出し
- 書類のスキャン保存
となっています。私にとってノートPCをiPadを置き換える場合は上記のすべてがストレスなく、効率よく行えることが重要と考えています。iPadOSを前提として書いていきます。
iPadOSでできること
iPadOSにアップデートが行われたことにより、iPadはかなりPCに近づいたのは間違いありません。スマートキーボードフォリオを利用すればiPadをPCライクに使うことは可能です。
iPadOSで実現する特徴的な機能を簡単にまとめていきます。
Safariでのデスクトップサイトの表示
iPadで表示されるサイトは基本的にはスマホやタブレット向けの表示が選択されるようになっていて、Googleのドキュメント、スプレッドシート、スライド等といったWEBSアプリケーションを利用しようとした場合、アプリを利用するしかありませんでした。アプリでの利用の場合はWEBアプリケーションでの利用と比べ、機能的な制約があることが多くそのWEBアプリケーションの実力を100%発揮することができませんでした。
iPadOSでは、Safariでの表示は通常のデスクトップと同じ扱いとなるため、WEBアプリケーションの機能を全て利用することが可能になりました。パソコンと同じようにWEB上で動作するアプリケーションがストレスなく使えるようになれば色々と効率よく仕事を進めたりすることが可能です。
マルチタスクの強化
iPadOSでは各種マルチタスクの関連の機能が大幅に強化されています。具体的に強化された機能は下記のようになっています。
- 同一アプリケーションのスプリットビューが可能に
- 同一アプリケーションの複数起動が可能に
- スライドオーバーでの複数のアプリの起動と切り替えが可能に
ノートパソコンであれば、複数のタスクを同時にこなしたり多くのウィンドウを活用することによって効率よく仕事が行なえます。PCほどの自由度はありませんが、iPadOSの登場によって少しだけPCライクな利用が可能となりました。
外部メモリの読み込みが可能
iPadOSでは今まで取り扱いができなかった、USBメモリや外付けSSDなどの外部ストレージを取り扱えるようになりました。また、ファイルの機能も強化されており、ZIPファイルの解凍などもデフォルトの機能で備わりました。
だいぶストレージに関してもクラウドの活用が進んできましたが、まだまだUSBメモリなども現役のためこちらの機能の追加は嬉しい方が多いのではないでしょうか。また、前述のマルチタスクの強化でファイルのコピーや移動もよりスムーズに行うことが可能になっています。
テキスト編集機能等の強化
日本語のIMEの強化やタッチ操作でのテキスト選択の操作改善が行われ、文章の入力や編集の機能が大きく進化しています。また、マウスでの操作が可能となり画面をタッチすることなくiPadの操作が可能になりました。タッチ操作でのテキスト選択の動作はとてもストレスでしたがiPadOSでかなり改善されています。また、マウスを利用すればタッチ操作でやりにくい操作などもある程度スムーズに行うことも可能です。
iPadがノートパソコンになり得ない理由
iPadOSの登場によりiPadはノートパソコンに近づく形で進化したのですが、私はまだまだノートパソコンやデスクトップPCの代わりになるとは思っていません。なぜなら、iPadOSになったからといっても解消しない、iPadの限界があるためです。
ということで、私がiPadがパソコンの代わりにならないと思っている主な理由を書いていきます。
ブラウザの限界
Safariがデスクトップ版のサイトにデフォルトで対応するなど、よりPCに近づきましたがあくまでもベースはスマホのブラウザだと痛感しています。 たしかにiPadOSでのPCサイト閲覧が可能なのですが、パソコンほどきちんと動かない事があるなど動作が不安定です。
まずは、私がよく使う「ワードプレスの管理画面」の動作がPCのように安定しません。
iPadOSのSafariでWordPressの投稿画面が綺麗に動くかと思ったけど暴れて目がチカチカする。。 pic.twitter.com/m9S547DC7X
— Tatsuya Yabe@ガジェニュー (@ayustatya) October 4, 2019
このような形で動作が完璧とは言えない部分が多く、時折大きなストレスを感じます。また、仕事で利用する「Googleドキュメント」や「Googleスプレッドシーシート」などに関してもiPadという制約からすべての操作をスムーズに行うことは難しいです。
さらに、ブログのHTMLやCSSを修正などをする際に利用していた、開発者ツールによるソースコードの表示もできません。サイト運営者にとってはなかなか厳しい環境です。
ということで、iPadはあくまでダブレットであって決してパソコンと同等ではありません。どちらかというとやはりスマホよりなのではと思います。今後の改善によりこのあたりは改善される可能性はありますが、今の所の評価としては私の用途には耐えられないとなっています。
日本語IMEの限界
iPadOSになってiPadのキーボード接続時の日本語入力の機能は大幅に進化したと思います。iOS12以前の日本語IMEを知っているからでしょうか、予測変換機能や学習機能はかなり改善がみられます。ただ、あくまでも改善されているだけであり、パソコンと同等の日本語IMEであるとは言えません。MacOSのIMEようなライブ変換機能もありませんし、グーグル日本語入力のような 外部の IME もキーボード利用時には全く使えません。また IME の細かい設定や変換の方法など カスタマイズできる部分が見られており、文字を入力するという生産性においてはノートパソコンにかないません。
私は文章を書くのが好きなのでキーボードを利用する時間が多いです。そのため、文字を入力するという作業がスムーズに行えないと効率が悪いし、文字入力にストレスを感じるのは避けたい所です。正直なところ、多くの文字を書かなくてはいけないような環境下ではiPadはおすすめできる状態ではありません。
ー2020/03/26追記ーーー
iPadOS 13.4がリリースされ日本語のIMEに大きな進歩がありました。Macと同等の「ライブ変換機能」がiPadOSにも実装されました。ライブ変換により入力に関わるストレスがだいぶ減ったように感じます。
この追記に関しては、iPadOSをアップデートして追記していますが、前よりもストレスなく文章を書くことが可能になっています。通常Macではライブ変換でなくGoogle日本語入力を利用しているため少し手間取るところがありますが、使い勝手としてはMacのライブ変換機能と遜色ないレベルで使えますので多くの人にとっては実用レベルになったと思います。
タッチパネルの限界
iPadとノートパソコンの決定的な違いとしては「タッチパネルで操作するのか」、「マウスやトラックパッドで操作するのか」がある。iPadOSでiPadでもマウスが使えるようになったとアナウンスされていますが、そのマウス対応は本当の意味でのマウス対応ではありません。あくまでも指先が不自由な方向けのアクセスビリティでの対応です。使ってみればわかりますが、マウスを使っているという感覚とは少し違い、単純に遠隔でタッチパネルをタッチ操作してると表現するのが正しいでしょう。
そのため、iPadOSで対応したマウスに関しては単純に「画面にタッチすることなくiPadの操作が可能」と言う程度にとどまり、決してノートパソコンを置き換える存在ではないと感じています。
スプリットビューやスライドオーバーの限界
iPadOSではマルチタスク関連機能が大幅にアップデートされていますが、あくまでもそれは「強化」であってPCほどの自由度はありません。スプリットビューとスライドオーバーで同時に処理できることには制限があります。
PCであれば様々なウィンドウを切り替えたり、それぞれのウィンドウのサイズを自由に調整したりも可能ですし、、デスクトップ画面を利用してたファイルの取扱なども比較的簡単にすることが可能です。パソコンだとウィンドウの取り扱いやファイルの取り扱いの自由度がかなり高いですが、iPadOSを搭載したiPadはそこまでスムーズには行えず、結局はスマホ延長でしかないと感じます。
ファイルの移動、コピー、貼り付けも限られた範囲でしか実行できませんし同時に確認することができるアプリにも制限があります。複数のアプリを跨いでの作業に関しては完全にPCが優れています。
アプリの限界
仕事では最近よくGoogleドキュメントやスプレッドシートを利用することが多く、ワードやエクセルを利用する機会は減りつつある。ただ、ビジネスではマイクロソフトのオフィスの利用機会はまだまだ多く、ビジネスの中心であることは変わりないと思う。
そんなマイクロソフトのオフィスにはもちろんiPadのアプリもあるが、パソコンと同様の機能は使えなくなっている。ちょっとしたファイルの確認や簡単な修正に関しては問題なく行えるが、すべての機能が使えるわけではない。アプリであるがゆえの制限がある。
ただ、ノートパソコンの代わりにすることは不可能ではない
今回のエントリーはiPadはノートパソコンの変わりになるのか?という題材のためiPadに関して、ネガティブな内容が多い。ただ、iPad自体は素晴らしいガジェットだと思うし、iPadOSも素晴らしいと思っている。タブレットとしての用途だけでなく、ノートパソコンやデスクトップPCでしか実現しないような一部の作業もほとんどストレスなく使えるようになっている。また、制約が多いということは、一つのことに集中しやすいという利点もあるので悪いことばかりではない。
ただ、パソコンを捨ててiPadのみで仕事をしたり、ブログを更新したりといった「私がノートパソコンに求めていること」に関しては全てを網羅しているわけではないため、代わりにはならないと思っているに過ぎません。
あなたはパソコン何に使いますか?
こちらをしっかりと理解し、それが「iPadでできるのか?iPadの機能としてあるかか?」という点をしっかり見極めてしまえば、iPadをパソコンと置き換えること自体は不可能ではないとおもう。
ネットサーフィンや動画やコンテンツの閲覧などむしろiPadが得意とする分野での利用が中心で、文章の作成などはほとんどしていない。というのであれば十分代替は可能だ。ちょっとした文字の入力等は音声入力やソフトウェアキーボードを利用すればよいし、もう少しだけ本格的に文字を書きたいなら物理的なキーボードを利用すれば良い。
また、仕事の面で言えばメールの返信やビジネスチャットでのやり取りなどに関しても同様で専用のアプリもあるため問題なく行える。ただ、効率は最高に良いとは言えない。多少ストレスはある。
最終的な判断ポイントとしては、iPadに不得意なことがあることをしっかりと認識して、それを「割り切って利用できるか」に尽きると思う。その非効率な部分を許容できるのかで、iPadがノートパソコンの代わりになるのか、それともならないのかが決まってくるのではないかと思う。
さいごに
ちなみにこのエントリーは最近購入したMacBook12インチで文字を書きながら、画像の作成や編集などはiPad Proを利用しておこなっています。
ブログを書き始めてからずっとパソコンを利用してブログの更新をしていましたが、去年のiPad Proの購入をきっかけにパソコンから卒業してiPadのみでブログの更新などおこなっていました。iPadのみで1年近く試行錯誤しましたが、ちょっとだけ足りない不得意な部分に耐えきれず、結局ノートパソコンに戻ってきてしました。
ノートパソコンに戻ってみるとiPadでやろうとしていたことは「できなくはないが、無理してストレスを抱えた状態で作業していたんだ」と実感させられました。
そもそもiPadが得意なこと、パソコンが得意なことが明確に分かれているため結局は使い分けるか、少しの不便を許容しながらどちらかを利用するかの選択をするのが良いのかなと思っています。
最後にまとめますが、iPadがノートパソコンの代わりなるのかを検討する際は、自分がノートパソコンでやりたいことを書き出してみてください。書き出した上で、それがiPadできちんとおこなえるのか?それとも、少し不自由があるのかを冷静に判断して最終的な結論をだすことをオススメします。
個人的な結論として、ノートパソコンを捨ててiPadを代わりに使えるのは下記のような人かなと。
こんな方におすすめ
- ネットサーフィンや動画・電子書籍等の閲覧などエンタメがメインの用途
- ちょっとしたメールの返信や、ビジネスチャットの利用
- 外出時に気軽に端末を持ち出してちょっとした作業がしたい
- アイディア出しなど気軽に使える端末が欲しい
割とスマホの延長線上にある用途ばかりな気がしますが、現状はタブレットとノートパソコンの間ぐらいの存在がiPadです。iPadOSによってパソコンと比べてできないことというのはほとんどなくなりました。
ただ、実際にやろうとするとパソコンほどの使いやすさはありません。ちょっとした作業や気軽に文章を書いたりする文には十分だと思いますが、本格的に長時間仕事をするなんてケースには明らかに向いていません。タブレットにはタブレットの良い部分が沢山あります。パソコン、タブレットそれぞれの得意な分野で実力を発揮してもらうのが良いのではないでしょうか。
長くなりましたが、結論をもう一度。
iPadを買おうか、それともノートパソコンを買おうか悩んでいる方や、ノートパソコンを捨ててiPadに一本化しようかなと考えている方のヒントになればと思っています。
てな感じで。